菊花石物語

菊花石コレクション 古田コレクション②

古田コレクション②

日本でもっとも美しい谷、根尾谷。
昭和の初め、初鹿谷に入った川合玉堂画伯は谷の美しさに感動して「美濃の国根尾の谷間に石を見る神技かしこ、七宝の菊」と読んでいます。昭和の終わりに道ができてから多くの人が初鹿谷に入ったので昔の面影がありません。奥様がそれを嘆き、氏に美しい桜石などがあれば持ち帰りをお願いしました。板谷の堰堤で探した石を奥様が一つ一つ配置を考え、根尾谷の美しさを再現しました。

紅い桜石と白いホタル石。硬い桜石は角ばり、白いホタル石は丸く、形と色のハーモニーが調和の美を見せています。

これは雷光石または雷石と呼んでいます。硬い大きな岩盤が強い力で割れ、そこに白い石英が凍るように入って結合させています。根尾谷では破壊された石にも時の慈しみがあり、それが斬新な美を創り出しています。

根尾谷は化石の宝庫。サンゴ、ウミユリ、フズリナなどが古生代の海にいざないます。これは大きな二枚貝、シカマイヤの化石です。化石は川に入ると見事な抽象紋様を描いています。

庭石が隠れるほど積み上げた桜、菊、ホタル、化石。根尾谷の豊かさをご夫婦が作り出しました。

趣味の離れは、大きな臼の中に小さな菊,桜、雷がテーブルの花。
ギターリストの安息の部屋。

横17センチもある大きな玉石です。玉石の面を平らにして、肌目と皮目の角をシャープに仕上げているので、凛とした格調があります。玉石の後ろは、皮目から花弁の先が飛び出して見えない花を力強く見せています。

横22幅4高16センチ
樋花菊花石

初鹿谷から産出した樋花菊花石です。火山灰土の中を樋が流れ、その流れの中で美しい花が出来ています。割れやすい母岩なので、細かく割れて産出した母岩の最後にあたる部分なのでしょうか。花の巻き込みも花の重なりも、互いに花の優しさをみせています。そして、右下は火山灰土の母岩を残しています。残した皮目が石全体に落ち着きを与えています。

横18高15幅7センチ
雷光石

根尾谷は濃尾地震の震源地です。有史以前から大地震が何度も起こりました。大きな硬い岩盤が直断的に割れたのでしょうか。その割れを水晶の結晶が伸びて結合させています。この石をケースに入れると、雷様の紅い絣模様が輝き、白い花を引き立ててくれています。

横17高16幅11センチ
川ずれ菊

板屋の堰堤で2018年の秋に自採した菊花石です。皮目が擦れて石面全体に2~3センチの小花が20個程ついています。中には花がびっしりと入っています。水の流れによって咲いた花は魅力的なのです。台は古田氏の自作。石の少し凹んだ所をポイントにして、出会いの思いを込めて丁寧に作っています。

横13高12幅11センチ
玉菊

今まで数多くの玉石を拾集した中で、比較的大きな玉石です。広い花弁のデザインは、どんな広がり方をしたのかと気になります。この中を見てみたい衝動をかきたてるのです。

横12高11幅10センチ
川ずれ菊

東谷川の川原で出会ってから数年経っています。花が深くえぐられていて、紅い芯を見せています。雨垂れが岩を穿つ様に、岩盤に挟まった母岩がここだけ強い水流にさらされていたのでしょうか。永年、流れと川原で光と雨風にさらされた感じが落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

横9高7幅6センチ
サバ菊

赤倉山から産出したサバ菊です。小さくても母岩をかぶり、侘び寂びの雰囲気を持っています。花が華やかなので魅惑的なキバ菊です。

サバ菊

薄樋母岩のサバ菊です。母岩が薄いので花も薄くなっています。母岩が軟らかい斑紋の母岩であったので、ぽつぽつと斑紋を腐蝕させ、肌目と花弁の縁を腐蝕させたので花が浮いています。ゆっくりとした時が創りあげた一輪の花です。

横18センチ


割れサバ菊

薄樋母岩の割れ目に沿って、入っていた花のところが自然に割れたのです。この割れた花を割れサバと呼んでいます。割れる場合は花の一番多い所から割れるので、一番の花を咲かせています。厚い皮目には、長い時が育んだ水蝕の跡が純白の花を引き立てます。

高10センチ